いつでもどこでも美味しい暮らし

食オタク主婦ブログ

奥田シェフの料理、その②

さてさて、アル・ケッチャーノ体験、後半です。

ニョッキ、マッシュルームのフォンデュータ

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「茶色いソースはマッシュルームを手でつぶし、一日置いたもので時間が
コクを出してくれます。これにブロードを足してミキサーにかけたもの。
白いソースは生クリームとチーズ、沸騰させないように気をつけます。
ニョッキは一度茹でて氷水に取り、再度茹でています。」

やっとイタリアンらしい一品?(笑)
ただただおいしーい。
マッシュルームのソースも美味。
細かく刻まれた生のほうは塩が効いて、まるでベーコンのようです。

羊のアローストと糸カボチャのマリネ

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「ダダ茶豆を食べて育てた地元(鶴岡市・羽黒地区)の丸山さんの
臭みのない羊です。これを食べたときに電撃が走り、
この羊がなくなるのはイヤだと思ってすぐ売り込みに行きました。
その後ミクニさんやヤマモトマスヒロさんからも
美味しいと言って(お使い?)頂いています。
糸カボチャは新潟は魚沼産のものです。一緒に食べてみてください。」

もも肉かな、と思いますが、確かに臭みは大変少なかったです。
ちょうどその時テーブルにいらして頂いたのでついつい、シェフに
「主人は羊が苦手なのですが、食べられるみたい、美味しいです。」と
リップサービスしてしまったけど、実は
オット曰く「でもやっぱし羊だ・・・」だったのでした・・・(笑)

それでも食べられたのは事実だし、羊好きな私からすると物足りないくらい。
ちょうど良く味が染みたさっぱり味の糸カボチャマリネが
また秀逸で、オットの分も横取りしてしまった(笑)

キャラメルのムースと和三盆のテュイール

牛乳のジェラートと百合のはちみつ

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ジェラートは1000メートル以上のところに棲むヤギのミルク
で作ったものです。チーズの勉強をしたときに1000メートル以上の
シェーブル(山羊のチーズ)が臭くない、ということを学び、
そう言えば地元で大変有名で美味しい月山竹も
1000メートル以上のものが一級品だということを思い出して
1000メートルというのは、ひとつ生態系が変わる
ポイントなのかな、と思っています。」

シメには結構甘めのムース。
私は美味しく頂きましたが、オットには少し甘すぎたよう。
山羊ミルクのジェラートは苦手な私にも全然臭くなく、
あまりの美味しさにびっくり。たまたまこの夏に山羊の新鮮なミルクを飲んで
それほど臭くないんだけど、でも途中でギブアップしてしまったのですが、
確かに、あれは標高900メートルくらいだったような・・・(笑)

カントゥッチと花作(はなづくり)大根のおろし

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「地元のタクアン用の(希少)大根おろしをカントゥッチに
乗せたものです。とても辛い大根ですが、消化の促進もしてくれます。
どうぞ12回は噛んでみてください。なじんできます。」

またまた驚きのラスト。
えっ、これを珈琲と一緒に食べるんですか・・・??
よく浸して食べるかたーいイタリアのビスケットですよね・・・・。
ってか大根おろしデザートですか???

おそるおそる・・・。

ひぇぇっ、大根がホントに辛い~。
12回噛むんですね~、いち、にぃ、さんん・・・。
(ちなみに噛む回数について、シェフは大真面目です。)

・・・とやってるうちにホントになじんできた。

カントゥッチというのは、いわゆる「ビスコッティ」のことで
もともとはトスカーナのとある会社の商標のようです。
ただのビスコッティならスタバにもあるけど(笑)、
これがまたカリッとフワッと美味しくて、辛い大根となんと、合うのです。

オットとも「後引くねぇ!」とびっくり。

さてさてさて・・・。

一連の料理のご説明で解るように、シェフの思いはとても繊細です。
生産者の思いをどっぷり双肩に背負い、
とにかく美味しく食べてもらいたい、これが最高の食し方なのだ、と
一生懸命お皿の中に天才的な組み合わせを作る。

当然、おそらく、何も聞かずに食べても美味しいものなのですが、
聞いてしまうと、なにやら多少難しい感じもする・・・。
私もオットも相当の理詰め人間(笑)なので
こういう説明こそが本当に有りがたく、ロジックがストンと腑に落ちた時に、
より感動するのですが、確かにその辺評価は分かれるかも知れません。

また、シェフは料理を出して下さる前に、
「ウチの料理は少し味がうすいと感じられることもあるかも知れません。
コースの途中でも、物足りなく感じる一皿もあるかも知れません。
でも食べ終わった時にちょうど良くなるように、抑揚のある音楽のように
考えて作っています。塩分は6グラムを超えないように作っています。
また、明日になったらちゃんとお腹がすくようになっています。」

いかにも「安心して食べてください」と、ひしひしと
熱意とやさしさが伝わってきて楽しく安心して
そして、美味しく頂けました(胃にもまったくもたれず)。

さらに、
「私の料理は家庭でも実現できます。組み合わせを考え出すまでは
確かに大変なのですが、そのあとは誰でも再現出来ます。
レシピも隠しません、全て公開します。」とのこと。

・・・あっぱれ。

実際、山形でも東京のサンダンデロでもそして今回も
シェフを理解する弟子の方々が作られているわけです。

言うに及ばず彼は超一流の料理人でありながら、
このシンプルの極みは自分でなく素材(生産者)と食べる人を見ているから。
だいたい修行をしたら人というのはそのウデをひけらかしたくなるものなのに
食材と食べる人に最高の状態を与えたいと思ったら、
マックス三つの組み合わせ、ソースや胡椒を添えない、など
自らのウデ(調理技術)の滅私奉公?になったと。

これを身を削って本気でやってしまうところに料理だけでなく、
人としての人気があるんだと思います。

一流シェフが「ヘタに手を加えない」んだから、
あとの、ましてや素人の主婦がアレコレ手を加えちゃいけない(笑)。

「すごい」、と思ったけど、実際は食材も揃わず、(塩を振る)ウデもなく
一主婦の私には難しい(笑)。けれど、潔さと自信に感銘を受け、
一介の主婦でも日々料理だけは精進しよう!、と思っている怠け者(私)から
迷いを取り去り、一筋の、
でも大きな光を与えて下さったことは間違いありません。

     ここまではとても無理でも、
     主婦はもともと食べる人(家族)を見ているのだから
     頑張ればプロと同じように、あるいはそれ以上に(!?)
     目の前に居る人にとびきり美味しいものを
     作ることがやっぱり出来るのかもっっ!!
     なんか、うれしいっっ!(以上、寝言です・笑)

シェフの料理で私自身再認したのは
「うまみ」がありすぎても美味しくない時がある、ということ。
また、よく「味が深い」とか表現しますが、それは
「いろいろな材料が渾然一体となった味」的な深さではなく、
単一の素材そのものがもともと持っている奥深さを引き出すこと
・・なんじゃないのか、(なーんてね)。
もともと素材そのものに旨みがあるのに、
煮魚をカツオと昆布の出汁で作っちゃったら魚に失礼なんだよ・・みたいな。
(出汁のモト、科学調味料を入れるなんざ論外)。

今の都会暮らしではスーパーや個人商店なんかをはしごして
それぞれの得意分野モノを調達するしかないのですが
(しかもいいモノは高いし・TT)、・・・それでも、
条件が揃えば最高の料理を作ることは可能なのだと
シェフは言ってくれたような気がします(曲解、いや極解か・笑)。

ブログのお友達で野菜を作ってる主婦の方がいますが、
食べごろの野菜を食べる時に採ることが出来る彼女のような人は
空極の料理の実現にもっとも近い。
更に釣りも狩りもしない私は・・・   これからよっっ(笑)

今日はイベントだったので、わずか(!)七皿(デザート除く)でしたが
アルケッチャーノでは、フルのコースで15品も出すとか。
やっぱし、四季にそれぞれ三日くらいは通い詰めたいです。

山形、庄内の人は幸せだ。
同じように食材に恵まれた私の好きな長野県にも似た様な料理人の方が
たくさんいらして頼もしいのですが、彼は間違いなくパイオニアでしょう。
政治より先に地方分権。全国の郷土に奥田シェフのような人が欲しい(笑)

最後に、息子さんと(途中パスタを茹でる間にお風呂も入りながら)
イタリアンのフルコースを作るシェフのお話、
とてもほほえましかったです。ユーモアもまた魅力。

あーあー、またまたリキ入れて書きすぎちゃったかな・・。
でも、美味しいもの、素晴らしいものは伝えたいのです。